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柑橘の香りをもつ、カレーの静かな主役
コリアンダーは、セリ科の一年草の種子を使うスパイスです。生の葉はパクチーと呼ばれますが、種子の香りは葉とまったく別物で、柑橘と花の側にあります。
古代エジプトの墓からも種子が見つかっている、最も古い栽培植物のひとつです。地中海から東へ渡り、いまは生産も消費もインドが中心になっています。
最初に来るのは柑橘です。オレンジの皮を剥いたときの、あの明るさに近い。そのすぐ後ろに花の香りが立ち上がります。そして——刺激がありません。辛くも、苦くもない。だからたくさん使えます。これがコリアンダーの本当の特徴です。
生の葉と種子は、同じ植物なのに別のスパイスだと考えたほうが確実です。葉のあの強い個性は種子にはありません。パクチーが苦手な人でも、種子は使えることがほとんどです。
そして炒り方で顔が変わります。炒らなければ花の側。じっくり深く煎ると、ナッツと土の側へ移っていく。同じ種子から二つの香りが取り出せるので、料理によって炒り分けます。
香りの行き先
見た目も使われ方もまるで違う、黒い小さな種子です。玉ねぎを焦がしたような香ばしさが主役で、コリアンダーの明るさとは正反対に見える。それでも香りの成分を三つ分け合っています。インドの台所で両方が同じ棚に並んでいるのは、偶然ではありません。
辛みの素材と、刺激のない素材。役割が違うので並べて考えることが少ない組み合わせです。ところが柑橘の側で通じている。生の生姜とコリアンダーを一緒に使うと、どちらの角も立たずに柑橘だけが伸びます。
世界中のミックススパイスが、この二つを土台にしてきました。クミンの苦みと土を、コリアンダーの柑橘と花が受け止める。どちらか一方だけでは偏るところを、二つで真ん中に置く。迷ったらまずこの組み合わせです。
コリアンダーの奥にある花の香りを引き出す方向。甘さを足すのではなく、香りの高さを足すと考えるとうまくいきます。菓子や果物を使った料理で効きます。
針葉樹や樹脂を思わせる方向へ。肉の煮込みや、長く火を入れる料理で骨格が出ます。コリアンダーだけだと軽すぎる、というときの一手。
同じ柑橘の方向でも、角度を変えて重ねる。単調な明るさが、奥行きのある明るさに変わります。
入れどき
はじめ、乾煎りして
ホール
炒り方で行き先が決まる。浅ければ花、深ければナッツと土。
途中、油や水分に
パウダー
全体をまとめる。とろみもわずかにつく。
最後、粗く挽いて
ホールを粗挽き
柑橘がまっすぐ立つ。食感も少し残る。
フライパンに油をひかず、弱火でゆっくり煎ります。色づく前に止めれば花の香りが残り、焦げ茶になるまで煎ればナッツと土の側へ動く。ここで料理の行き先が決まるので、いちばん手をかける価値がある工程です。
具材に絡めてから水分を加えます。コリアンダーはパウダーの量が多くても壊れにくいので、他のスパイスがばらばらに感じるときに足すと、ひとつにまとまります。
すり鉢で粗く砕いて散らします。細かく挽かないのがコツで、粒が残っているほうが噛んだときに香りが弾けます。
他のスパイスと違って、入れすぎて壊れることがほとんどありません。刺激がないからです。分量に迷ったら、多いほうへ倒して構いません。
野菜、魚介、肉。どれとも合います。得意不得意がないのがコリアンダーの得意技です。とくに効くのは、他のスパイスが強すぎて散らかっているとき。あいだに立って、全体をひとつにまとめます。
単独で使うと印象が薄い、という弱点はあります。コリアンダーだけで香りを立てようとせず、必ず誰かと組ませてください。
にんじんのラペ。せん切りにしたにんじんに塩、オリーブオイル、レモン。そこへ粗く砕いたコリアンダーを散らすだけです。粒が残っているほうが、噛んだときに香りが弾けます。
ホールは薄いベージュの球で、軽い。手に取ると中が空洞に近いのがわかります。指で潰せるくらい柔らかいので、家庭のすり鉢でも簡単に挽けます。
ホールで買うのがおすすめです。挽くのが楽で、しかも炒り分けができる。パウダーだけでは、あの深煎りの香りに辿り着けません。
パウダーの香りは4か月ほどで落ちます。密閉して、直射日光と熱源から離す。コンロの脇は最も避けたい場所です。
Inspiceは、コリアンダーを17のブレンドに使っています。全素材のなかで最も出番が多い一本です。
スパイスカレーは4作すべてで、原材料表の一番目にコリアンダーが来ます。ディッシュNo.3も同じ。カレーの背骨をこの香りに置く、というのが最初からの設計です。固有の香りを持たないからこそ、他の全員を繋げる場所に据えました。
そしてチャイにも、the cocoaにも入っています。表の後ろのほうに、ごく少量。主役の座を譲ったうえで、まだそこにいる。それがコリアンダーの働き方です。
コリアンダーは、Inspiceの17のブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。
スパイスカレースパイスカレー スパイスパック シンフォニーNo.1原材料表の一番目。クミンと組んで背骨をつくる、いちばん教科書的な形の一本です。
スパイスカレースパイスカレー スパイスパック シンフォニーNo.2一番目。4作のなかで最も比重が大きく、コリアンダーの明るさがそのままこのカレーの性格になっています。
スパイスカレースパイスカレー スパイスパック シンフォニーNo.3一番目。五香粉の甘さを支える土台として、下から全体を持ち上げています。
ディッシュディッシュ シンフォニーNo. 1パプリカに次ぐ二番目。香ばしさの主役を立てながら、その足元を柑橘で支える役。
ディッシュディッシュ シンフォニーNo. 3一番目。マニゲットや花椒の刺激が散らばらないよう、あいだを繋いでいます。
チャイ(スパイスパック)「カカオニブチャイ スパイスパック」 2パック入りカカオニブの香ばしさと紅茶のあいだ。ここでも繋ぎ役です。
チャイ(スパイスパック)「チャイ スパイスパック」 2パック入り表の終わりに近い位置。カシアとジンジャーの太い香りの隙間を埋めています。
チャイ(CHAInstant)4 FLAVOR CHAInstant PACK「4フレーバー チャインスタント パック」4種の香りをひとつの箱にした詰め合わせ。どの一杯にも、繋ぎ役として入っています。
チャイ(CHAInstant)CACAONIBS CHAInstant「カカオニブチャイ インスタント」ごく少量。カカオが主役の一杯で、香りの底を平らにしています。
チャイ(CHAInstant)CHAInstant「チャイ インスタント」チャイと同じ役割。溶かして飲む形でも、隙間を埋める働きは変わりません。
チャイ(CHAInstant)Golden CHAInstant「ゴールデンチャイ インスタント」ターメリックの土に、柑橘をわずかに。土だけにさせないための一滴です。
チャイ(CHAInstant)HotBoost CHAInstant「ホットブーストチャイ インスタント」生姜と唐辛子の熱が前に出る一本。その熱の下に、静かな柑橘を敷いています。
チャイ(CHAInstant)MINT CHAInstant「ミントチャイ インスタント」三種のミントが立ち上がる一本で、その足元を固めています。
チャイ(CHAInstant)Yomogi CHAInstant「ヨモギチャイ インスタント」よもぎの青さと紅茶のあいだ。和の香りと南の香りを繋ぐ位置です。
ココアthe cocoa「ハイカカオとスパイスのココア」/84g表の後半、ごく少量。カカオの苦みとスパイスの熱のあいだに、細い橋を架けています。同じ植物ですが、使う部分が違います。パクチーは葉、コリアンダーとして売られているスパイスは種子です。香りはまったく別物で、パクチーが苦手な方でも種子は問題なく使えることがほとんどです。
完全な代用は難しいですが、キャラウェイかクミンを少量。ただしどちらも個性が強いので、コリアンダーの「誰とでも馴染む」性質は再現できません。むしろ量を減らして他のスパイスを足すほうが近づきます。
ホールをおすすめします。軽くて柔らかいので家庭のすり鉢でも挽けますし、炒り方を変えて香りを二通り取り出せるのはホールだけの利点です。
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