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Inspiceスパイス事典カシア
カシア(カシア)
Cassia

カシア

チャイを支える、力強い方のシナモン

カシアは、クスノキ科の常緑樹の樹皮を乾かしたスパイスです。日本で「シナモン」として売られているものの多くは、実際にはこのカシアです。

カシアとは

学名
Cinnamomum cassia
科名
クスノキ科
使用部位
樹皮
原産地
中国南部
主な産地
中国、ベトナム、インドネシア
和名
シナニッケイ(支那肉桂)
別名
中国桂皮、サイゴンシナモン、ベトナムシナモン
流通の形
スティック(ホール)/パウダー

セイロンシナモンより北で育ち、樹皮が厚く硬い。中国では古くから使われてきました。五香粉にもチャイにも、この木の皮が入っています。

どんな香り

太い。まっすぐ。シナモンと比べたときの第一印象はこれです。甘さと温かさが濃く、そこにピリッとした刺激と渋みが乗る。シナモンが持っている柑橘のような爽やかさは、カシアにはありません。

その太さが、煮出す飲みものでは強みになります。牛乳のように濃度のあるものに負けない。チャイのスパイスがカシアであることが多いのは、この理由です。繊細さでは負けますが、押しの強さでは勝ちます。

そしてカシアには、シナモンにはない甘い成分がひとつあります。クマリンといって、桜餅の葉やトンカ豆の、あの粉っぽく甘い香りと同じもの。カシアの甘さがシナモンより「濃い」と感じられるのは、この成分が加わっているからです。日本人には馴染みの深い香りでもあります。

樹皮は一枚の板が硬く丸まった形をしています。指で崩せるシナモンとはまるで違い、家庭のミルではまず歯が立ちません。ホールで買うなら、砕かずに丸ごと使う前提で。

香りの行き先

カシア

意外に近い

カシアには固有の香りがありません。持っている香りをすべて他のスパイスと分け合っている。ただしシナモンと違って縁が細く、主軸一本で立つタイプです。誰とでも組めるが、自分の顔は失わない。

一緒に使うと伸びる

甘さの幅を広げる

カシアの香りが、どの方向へ伸びるか

意外に近い素材

クミン

乾いた土と、甘い樹皮。菓子と料理くらい離れて見えますが、カシアの甘さは土を敷かれると持続します。北アフリカや中東の肉料理でこの組み合わせが多いのは、偶然ではありません。

ナツメグ

どちらも甘く温かい素材なので意外ではない、と思われるかもしれません。意外なのは効き方のほうです。カシアはナツメグの強さを抑えます。ナツメグを入れすぎたときの救済策になる、数少ない相手です。

一緒に使うと伸びる素材

土と苦みを足す ── クミン、スターアニス、ジンジャー

甘さの下に別の質感を敷く方向。カシアは甘さが強いので、そのままだと単調になりやすい。土や苦みが入ると、甘さが立体になります。

甘さの幅を広げる ── ナツメグ、アニス、トンカ豆

ナツメグとの組み合わせは特に噛み合います。カシアの甘さがナツメグの強さを抑え、ナツメグの温かみがカシアに奥行きを足す。互いの角を落とし合う関係です。

清涼感を足す ── カルダモン、ローリエ、オールスパイス

重くなりがちなカシアに、抜け道をつくる方向。チャイでカルダモンが必ず隣にいるのは、この役割のためです。

料理への応用

入れどき

はじめ、油に

スティック

樹皮の奥から香りが出るまで時間が要る。最初に入れる。

カレー煮込みピラフ

牛乳で煮出す

スティック

脂肪が香りを受け止め、太さがそのまま出る。

チャイミルク煮ホットワイン

最後、パウダーで

パウダー

甘い香りがまっすぐ立つ。加熱しないほうが強い。

トーストコーヒー焼き菓子
カシアを、いつ入れるか

はじめ、油にスティック

弱火の油にスティックごと。厚い樹皮から香りを引き出すには時間がかかるので、他のどのスパイスより先に入れて構いません。折らずに入れて、最後に取り出すのが扱いやすい。

牛乳で煮出すスティック

牛乳や豆乳と一緒に、蓋をして煮出します。香りは水に溶けにくく、脂肪と蒸気が運ぶ。カシアの押しの強さは、この使い方でいちばん活きます。

最後、パウダーでパウダー

火から下ろしてから振ります。パウダーは加熱すると急速に香りを失うので、仕上げに。砂糖と混ぜておくと均一に散らせます。

分量の三段階(2人分の目安

気配ほどスティック1/2本、またはパウダー小さじ1/4料理が温かくなる。カシアとは気づかれない
効かせるスティック1本、またはパウダー小さじ1/2カシアの香りだとわかる。ふだんはここ
主役にするスティック2本、またはパウダー小さじ1カシアの料理になる

シナモンより一段強いので、シナモンのレシピをカシアで作るなら少なめから。逆にカシアのつもりでシナモンを使うと、物足りなく感じます。

この食材と合う理由

牛肉、豚肉、りんご、さつまいも、牛乳、チョコレート。甘さと脂肪を持つものに向きます。とくに乳製品との相性がよく、押しの強い香りが乳脂肪に負けない。チャイにカシアという組み合わせが定着しているのは、この理由です。

淡白な白身魚や、繊細な出汁の料理には向きません。カシアの甘さが料理の輪郭を覆ってしまいます。

うまくいかないときの直し方

  • 香りが出ない時間と油が足りていません。厚い樹皮の奥から出てくるまでには時間がかかります。早めに入れて、油か牛乳を添えてください
  • 渋い・えぐい煮すぎです。カシアには渋みの成分があり、長く煮ると出てきます。香りが立ったら取り出して構いません
  • ミルで挽けない挽けなくて正常です。カシアの樹皮は硬く、家庭のミルでは歯が立ちません。パウダーが要るなら、パウダーを買ってください

一皿の設計例

チャイ。カシアのスティックを1本、生姜の薄切りと一緒に少量の水で煮出し、紅茶の葉と牛乳を入れて煮る。それだけです。シナモンで作ると香りが牛乳に負けますが、カシアなら負けません。

選び方・保存

一枚の厚い樹皮が硬く丸まった形をしています。何層にも巻かれて指で崩せるならシナモン、これがカシアとシナモンのいちばん確実な見分け方です。

スティックなら一年ほど保ちます。パウダーは半年で香りが落ちるので、煮出す用途ならスティックのほうが経済的です。

密閉して冷暗所へ。折れやすいので、袋のままより缶や瓶に入れておくと粉になりません。

Inspiceでは、どう使っているか

Inspiceは、カシアを17のブレンドに使っています。コリアンダー、クローブと並んで最も出番の多い一本です。

チャイは全種でカシアが原材料表の上位に来ます。牛乳で煮出す飲みものだからです。シナモンでは乳脂肪に負けて、香りが立ち上がってこない。押しの強さが要る場所には、最初からカシアを置いています。

シナモンを使っているのはフレアラインMELLOW FIREの一本だけ。17対1という差は、優劣ではなく用途の差です。煮出すならカシア、橋渡しならシナモン。

カシアが働いている商品

カシアは、Inspiceの17のブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。

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よくある質問

カシアとシナモンは何が違いますか?

別の木です。カシアは中国やベトナム産で樹皮が厚く硬く、香りが濃くまっすぐ。シナモンはスリランカ産で薄く柔らかく、柑橘のような爽やかさがあります。日本で安価に売られている「シナモン」の多くはカシアです。

どちらを買えばいいですか?

用途で決まります。チャイや煮込みのように濃いものと合わせるならカシア、りんごや焼き菓子のように繊細なものならシナモン。一本だけ選ぶなら、日本の食卓ではカシアのほうが出番が多いはずです。

スティックが硬くて挽けません

挽けなくて正常です。カシアの樹皮は硬く、家庭用のミルでは歯が立ちません。丸ごと煮出して最後に取り出す使い方が本来の形で、パウダーが必要なときはパウダーを買ってください。

カシアの甘い香りは何ですか?

クマリンという成分です。桜餅の葉や、トンカ豆、刈りたての干し草の香りと同じもの。シナモンには含まれず、カシアだけが持っています。カシアの甘さがシナモンより濃く感じられるのは、この香りが加わっているからです。

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