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Inspiceスパイス事典メース
メース(メース)
Mace

メース

ナツメグを包む、深紅のレースの香り

メースは、ナツメグの種子を包んでいる、レース状の赤い網を乾かしたものです。ナツメグとメースは、一つの実から採れる二つのスパイスです。

メースとは

学名
Myristica fragrans
科名
ニクズク科
使用部位
種子を包む仮種皮
原産地
インドネシア・マルク諸島
主な産地
インドネシア、グレナダ、スリランカ
和名
ニクズク花
別名
メースブレード
流通の形
ブレード(ホール)/パウダー

収穫したての仮種皮は鮮やかな真紅で、乾かすとオレンジがかった琥珀色になります。ブレード(刃)と呼ばれるのは、この平たい形からです。

どんな香り

ナツメグに似ています。当然です、同じ実なのですから。ただし渋みがありません。ナツメグには口を締めるような渋さがありますが、メースにはそれがない。同じ方向の香りを、もっと柔らかく届けます。

だから使い分けが決まります。ナツメグでは強すぎる、渋みが料理を覆ってしまう——そういう場面でメースを選ぶ。白いソース、透明なスープ、繊細な魚。ナツメグが入りにくいところに、メースなら入れます。

そして色が出ません。ナツメグを削ると茶色い粉が散りますが、メースのブレードは煮出しても料理を濁らせない。ベシャメルソースにメース、という定番には、香りだけでなく見た目の理由もあります。

香りの行き先

メース

意外に近い

メースとナツメグは、香りの成分を五つ共有しています。スパイス全体でも最大級の近さです。同じ実から採れるのだから当然ですが、それでも渋みの有無だけで、これほど使いどころが変わります。

メースの香りが、どの方向へ伸びるか

意外に近い素材

コリアンダー

熱帯の仮種皮と、地中海の種子。産地も見た目も違いますが、香りの成分を分け合っています。松と柑橘の側で通じていて、この二つを合わせると驚くほど素直にまとまります。

スターアニス

繊細なメースと、押しの強い八角。強さがまるで違うので同居させにくそうに見えますが、共通の成分があります。中華の白い煮込みにメースが使われるのは、この近さがあるからです。

一緒に使うと伸びる素材

胡椒と組む ── ブラックペッパー、ホワイトペッパー

抜群に噛み合う組み合わせです。白いソースならホワイトペッパーと。色も香りも濁らせずに、輪郭だけが出ます。

柑橘で開く ── コリアンダー、カルダモン

メースの甘い温かみに、明るさを足す方向。とても相性がよく、菓子でも料理でも効きます。

甘さを重ねる ── スターアニス、オールスパイス、クローブ

同じ甘く温かい方向を厚くします。ただしメースは繊細なので、相手を控えめに。

料理への応用

入れどき

はじめ、ブレードごと

ブレード

香りが出るのに時間が要る。色は出ない。

ベシャメルクリーム煮ポタージュ

途中、下味に

パウダー

肉や魚のクセと釣り合う。渋みが出ない。

白身魚ソーセージ

最後、粉をひとつまみ

パウダー

甘い温かみがまっすぐ立つ。

焼き菓子ポテトサラダスープ
メースを、いつ入れるか

はじめ、ブレードごとブレード

牛乳やスープにブレードのまま入れて、最後に取り出します。色が出ないので、白い料理を濁らせません。ここがナツメグとの決定的な差です。

途中、下味にパウダー

すり込むか、混ぜ込むか。ナツメグでは強すぎると感じる淡白な素材に、メースなら使えます。

最後、粉をひとつまみパウダー

火から下ろしてから。繊細な香りは加熱で飛びやすいので、仕上げに置くのがいちばん効きます。

分量の三段階(2人分の目安

気配ほどブレード1/2枚、またはパウダー小さじ1/8料理が丸くなる。メースとは気づかれない
効かせるブレード1枚、またはパウダー小さじ1/4メースの香りだとわかる。ふだんはここ
主役にするブレード2枚、またはパウダー小さじ1/2メースの料理になる

ナツメグと同じ量では強すぎます。渋みがないぶん入れすぎに気づきにくいので、少なめから。

この食材と合う理由

白身魚、鶏、子牛、じゃがいも、カリフラワー、牛乳、クリーム。淡白なものと、白いもの。メースは色を出さず、渋みも出さないので、素材の見た目と味を邪魔しません。ナツメグが入れない場所に入っていける、というのがメースの立ち位置です。

味の濃い赤身肉や、香りの強い料理では埋もれます。そういう場面ではナツメグのほうが向いています。

うまくいかないときの直し方

  • 香りが弱い加熱が長すぎるか、パウダーが古い可能性があります。繊細な香りなので、仕上げに足してください
  • ナツメグと同じに感じる近いのは確かです。違いは渋みの有無で、白いソースや淡白な魚で使うとはっきり分かれます
  • ブレードが硬くて挽けない挽かずにそのまま煮出して、最後に取り出す使い方が本来の形です。粉が必要ならパウダーを買ってください

一皿の設計例

ベシャメルソースにメース。牛乳を温めるときにブレードを1枚入れて、最後に取り出す。それだけで、いつものホワイトソースに奥行きが出ます。色は濁りません。

選び方・保存

オレンジがかった琥珀色の、平たいレース状のかけらです。色が濃く、しなやかなものが上等。ぱさぱさに乾ききったものは香りも抜けています。

ブレードなら一年ほど。パウダーは香りが早く落ちるので、少量ずつ買ってください。

密閉して冷暗所へ。軽いので、他のスパイスの下敷きにならないように。

Inspiceでは、どう使っているか

Inspiceは、メースを3つのブレンドに使っています。同じ実から採れるナツメグは14。三対十四という差が、そのまま使い分けの答えです。

スパイスカレー シンフォニーNo.1では、メースをフェヌグリークとまったく同じ重さで置いてあります。カレーらしさを担う素材と、渋みのない温かみ。対等に並べた配置です。

ナツメグでは強すぎる、渋みが前に出てしまう——そう判断した場所にだけメースを使っています。一つの実から二つの階調を取り出せる、というのがこの素材の使い道です。

よくある質問

メースとナツメグは何が違いますか?

同じ実から採れます。種子がナツメグ、それを包むレース状の網がメース。香りは近いのですが、メースには渋みがなく、色も出ません。ナツメグでは強すぎる場面で使うとうまくいきます。

ナツメグの代わりに使えますか?

使えますが、同じ量では物足りなく感じます。逆にナツメグの代わりにメースを選ぶ理由は、渋みと色が出ないこと。白いソースや淡白な魚では、メースのほうが確実です。

ブレードとパウダー、どちらを買えばいいですか?

用途で決まります。牛乳やスープに煮出して取り出すならブレード、下味や仕上げに使うならパウダー。ブレードのほうが香りは長持ちします。

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