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魚のハーブ。甘くすっとする緑の種子
フェンネルは、セリ科の多年草の果実を使うスパイスです。アニスに似た甘さと、クミンに似たカレーらしさを、一粒で兼ねています。
地中海が原産で、いまは生産の中心がインドです。インドの食堂では、食後に砂糖がけの種を口に含む習慣が続いています。
甘い。刺激はまったくありません。噛むとアニスに似た甘さが広がり、そのあとにわずかな苦みが残る。この苦みが、ただ甘いだけのスパイスとフェンネルを分けています。
面白いのは、もうひとつの顔があることです。カレー粉の匂いに近い、乾いた香ばしさ。アニスの側とクミンの側を一粒で兼ねているので、カレー粉の調合ベースとして重宝されてきました。二つの方向へ同時に橋を架けられる素材です。
乾煎りすると香ばしさの側が前に出ます。青っぽさが抜けて、ナッツに寄っていく。甘さを穏やかにしたいときは、この手が使えます。
香りの行き先
フェンネルには「スイートクミン」という別名があります。見た目が似ているからだと思われがちですが、香りの成分も分け合っている。クミンの乾いた土と、フェンネルの乾いた香ばしさは地続きです。
甘い樹皮と、甘い種子。同じ方向なので重ねても意味がなさそうに見えます。ところがカシアはフェンネルの奥にある苦みを引き出します。甘さが増えるのではなく、甘さと苦さが同時に立って香りが締まる。
同じ甘さの成分を持つ者どうし。束ねると甘さが強くなるので、量は控えめに。三つ全部を入れる必要はまずありません。
甘さが重いと感じるときの一手。カルダモンの清涼感がフェンネルの甘さと釣り合い、香りが上へ抜けます。
甘さの下に乾いた質感を敷く方向。フェンネルが「カレーらしい」ほうの顔を出します。豚肉やソーセージで効きます。
フェンネルの奥にある苦みを引き出す組み合わせ。甘さと苦さが同時に立って、香りが締まります。
入れどき
はじめ、油に
ホール
甘い香りが油に移る。はじけたら次へ。
途中、肉にすり込む
粗挽き
脂と釣り合い、甘さが肉のクセを受け止める。
最後、そのまま噛む
ホール
甘さと清涼感が口に残る。
弱火の油にホールを。細かい泡が立って香りが上がったら次へ進みます。焦がすと苦みだけが残るので、色づく前に止めること。
焼く前にすり込みます。フェンネルと豚肉の組み合わせはイタリアのサルシッチャで定番になっていて、脂の強い部位ほど効きます。
インドの食堂では、食後に砂糖がけのフェンネルを口に含みます。加熱していないぶん、甘さと清涼感がまっすぐ立ちます。
刺激がないので辛さで失敗することはありませんが、多すぎると甘さが際立ちます。ミックススパイスに入れるときはとくに控えめに。
豚肉、青魚、にんじん、キャベツ、じゃがいも。クセのある野菜と、脂のある肉。フェンネルは相手のクセを消すのではなく、甘さで包んで角を取ります。イタリアと南アジアという遠く離れた土地で、どちらも豚と魚に使われてきました。
菓子には向きません。甘い香りを持っているのに、乾いた香ばしさが同居しているためです。デザートに甘い香りが欲しいならアニスのほうが素直です。
豚肉のフェンネル焼き。豚バラや肩ロースに、塩とフェンネルの粗挽きをすり込んで焼くだけ。脂が強いほど、甘い香りが効きます。
細長い薄緑の粒で、縦に筋が入っています。色が抜けて薄茶になったものは香りも落ちています。緑が残っているものを選んでください。
ホールで買うのがおすすめです。家庭のすり鉢でも挽けますし、そのまま口に含む使い方はホールでしかできません。
パウダーの香りは半年ほどで落ちます。密閉して冷暗所へ。
Inspiceは、フェンネルを4つのブレンドに使っています。
フレアラインGREEN NUDGEでは、バジル・タラゴン・セージという葉のハーブに囲まれた位置にいます。葉ばかりが並ぶなかで、フェンネルだけが種子。甘さと乾いた香ばしさを一粒で持ち込める素材として、ここに置きました。
なおInspiceのチャイには「フェンネルアクナビ」という別の素材を使っています。同じフェンネルの仲間ですが、産地と加工が違うので別の素材として数えています。
フェンネルは、Inspiceの4つのブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。
別の植物ですが、甘さの成分を共有しているので香りは似ています。違いは、フェンネルには乾いた香ばしさが同居していること。菓子ならアニス、料理ならフェンネルと考えると外しません。
同じ植物です。野菜として売られている白い球状の部分は株元、スパイスとして使うのは果実。香りの方向は近いのですが、使い方はまったく違います。
インドの食堂に置いてある、色のついた粒がそれです。砂糖でコーティングしたフェンネルで、口直しとして食べられています。そのまま噛むと、甘さと清涼感が立ち上がります。
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