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Inspiceスパイス事典ベチバー
ベチバー(ベチバー)
Vetiver

ベチバー

「静寂の香り」。大地に根ざすイネ科の根

ベチバーは、イネ科の多年草の根です。葉ではなく根を使う、珍しいお茶の素材。Inspiceが使っているのは、福岡県八女市星野村で自然栽培された国産のベチバーです。

ベチバーとは

学名
Chrysopogon zizanioides
科名
イネ科
使用部位
原産地
南インド
Inspiceの産地
福岡県八女市星野村(自然栽培)
和名
なし
別名
カスカス、ウサラ
流通の形
乾燥した根(刻み)

南インドが原産で、二千五百年以上前から親しまれてきました。インドでは根を編んで簾にし、水をかけて涼をとる。刻んで枕に入れる。飲むだけの植物ではありませんでした。

どんな香り

土です。ただし、汚れた土ではありません。雨が上がったあとの、湿った地面から立ちのぼるあの匂い。スモーキーで、奥に甘さがあって、深い。飲むと、すうっと体の内側へ意識が向いていくような感覚があります。

香水の世界では古くから知られた素材です。香りが長く残る性質があるので、土台として使われてきました。ただしInspiceが向き合っているのは、香りをつける原料としてではなく、そのまま煮出して飲むお茶としてのベチバーです。

そして茶葉ではないので、カフェインを含みません。夜に飲めるお茶を探していて、麦茶やルイボス以外の選択肢が欲しい——という場面で、この根は答えになります。

香りの行き先

ベチバー

意外に近い

ベチバーは根を使う、数少ない香りの素材です。葉でも実でも樹皮でもない。地面の下で育ったものだけが持つ、湿った土の香りがあります。

一緒に使うと伸びる

ベチバーの香りが、どの方向へ伸びるか

意外に近い素材

クミン

飲みものの根と、カレーの種子。まったく違う場所にある素材ですが、どちらも「土の香り」を担当しています。ベチバーを飲んだあとにカレーを食べると、同じ方向の香りが続いていることに気づくかもしれません。

高原赤山椒

地下の根と、山の実。どちらも日本の土地で育ったものです。ベチバーの土の香りに、山椒の澄んだ柑橘が乗ると、和の香りとして成立します。国産のベチバーだからこそ試せる組み合わせです。

一緒に使うと伸びる素材

高さを足す ── カルダモン、レモンピール

ベチバーの香りは低い位置にあります。上へ抜ける素材を足すと、土に沈まずに立ち上がります。Inspiceのベチバーティー No.2がこの構造です。

涼しさと組む ── ペパーミント、トゥルシー

インドで涼をとるために使われてきた植物です。涼しい香りと重ねると、その使い方に近い方向へ寄ります。

土を重ねる ── クミン、ターメリック

同じ土の方向を厚くする組み合わせ。飲みものよりも、料理で使うときの手です。

料理への応用

入れどき

煮出す

乾燥した根

土の香りがゆっくり出る。時間が要る。

ホットティー水出し

水出しにする

乾燥した根

雑味が出ず、香りだけが澄んで残る。

アイスティー夏の飲みもの

二煎目を淹れる

一度使った根

香りが柔らかくなり、別の顔が出る。

ホットティー
ベチバーを、いつ入れるか

煮出す乾燥した根

沸かした湯で数分。根なので硬く、葉のお茶より時間がかかります。急がずに待つと、色と香りが同時に出てきます。

水出しにする乾燥した根

水に入れて冷蔵庫で数時間。インドでは酷暑を乗り切るための飲みものでした。熱く飲むより、冷たいほうが好きだという方も多い。

二煎目を淹れる一度使った根

根は硬いので、一度で出しきりません。二煎目は一煎目より穏やかで、こちらのほうが好きだという方もいます。

分量の三段階(マグカップ1杯の目安

軽くひとつまみ香りが淡く出る。夜に飲みやすい濃さ
ふつう小さじ1土の香りがはっきりする。ふだんはここ
濃く小さじ2色も香りも濃く出る

茶葉ではないので、長く置いても渋くなりません。濃さは好みで決めて構いません。

この食材と合う理由

はちみつ、ミルク、レモン、生姜。飲みものとしての相性です。土の香りは甘さと乳脂肪でよく丸くなります。料理に使うなら、根菜やきのこ、豆といった土の側の食材と。

香りの強いスパイスと組ませると埋もれます。ベチバーの香りは主張が強くないので、主役に置くほうが活きます。

うまくいかないときの直し方

  • 香りが薄い根なので抽出に時間がかかります。もう少し長く煮出すか、量を増やしてください
  • 土臭く感じるそれがベチバーの香りです。苦手なら、はちみつかミルクを足すと丸くなります
  • 夜に飲んでも大丈夫か気になる茶葉ではないので、カフェインを含みません。夜の一杯として作られた飲みものです

一皿の設計例

ベチバーの水出し。刻んだ根を水に入れて、冷蔵庫にひと晩。翌朝には琥珀色になっています。夏の麦茶の代わりに。

選び方・保存

刻んだ根の状態で流通します。土のような見た目ですが、これが正常です。

乾物なので長く保ちますが、香りは落ちます。密閉して冷暗所へ。

一度煮出した根は、二煎目まで使えます。捨てるのはそのあとで。

Inspiceでは、どう使っているか

Inspiceのベチバーは、福岡県八女市星野村で自然栽培されたものです。お茶の名産地として知られる村の、山あいの畑で育っています。

この商品は、調香味士の西村祥がベチバーを煮出して飲んだ、その一杯から始まりました。すうっと全身が透明になっていくような香り。そのまま眠りに落ちてしまうほどの心地よさ。翌朝、この体験を届けたいという気持ちが残っていて、産地を探しました。星野村で丁寧に自然栽培している生産者に連絡を取り、八月に現地を訪ねています。

同じ品種でも、育つ土地で香りが変わります。ワインのテロワールと同じことです。星野村のベチバーは、海外のものと比べものにならないほど芳醇で、そして優しい。繊細なお茶として飲むなら、この土地のものがいちばんでした。

ベチバーティーは、この根を主役にした二つのブレンドです。No.1はエキナセアとバタフライピーと、No.2はカルダモンとイエルバブエナと。どちらも素材は三つだけ。ベチバーの香りを聴かせるために、逃げ場のない構成にしてあります。

よくある質問

ベチバーとはどんな植物ですか?

イネ科の多年草で、使うのは根です。南インドが原産で、二千五百年以上前から親しまれてきました。香水の原料として知られていますが、インドでは煮出して飲む習慣もあります。

カフェインは入っていますか?

入っていません。茶葉ではなく根を使うためです。夜の一杯として飲めるお茶を探している方に向いています。

Inspiceのベチバーはどこ産ですか?

福岡県八女市星野村です。お茶の名産地として知られる村で、自然栽培されたものを使っています。同じ品種でも育つ土地で香りが変わり、星野村のものは芳醇で優しい香りに育ちます。

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