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Inspiceスパイス事典フェヌグリーク
フェヌグリーク(フェヌグリーク)
Fenugreek

フェヌグリーク

メープルに似た甘い香り。カレーらしいコクの立役者

フェヌグリークは、マメ科の一年草の種子です。カレー粉のあの匂い——「カレーらしさ」と呼ばれているものの、かなりの部分がこの種子から来ています。

フェヌグリークとは

学名
Trigonella foenum-graecum
科名
マメ科
使用部位
種子(葉も食べる)
原産地
地中海東部から西アジア
主な産地
インド、トルコ、エジプト
和名
コロハ(胡廬巴)
別名
メティ、ギリシャの干し草
流通の形
ホール/パウダー/葉(カスリメティ)

学名は「ギリシャの干し草」を意味します。刈りたての干し草に似た匂いがあり、家畜の飼料にも使われてきました。

どんな香り

メープルシロップです。焦がした砂糖、キャラメル、コーヒー。甘く香ばしい方向の匂いが、この小さな硬い種子から出てきます。単体で嗅ぐと、これがカレーの材料だとは思えないかもしれません。

ところが、この香りこそが「カレーらしさ」の正体の一つです。市販のカレー粉に必ず入っているのはそのため。抜くと、何かが足りないカレーになります。しかも代わりが利きません。

もうひとつ、料理をつくる側にとって大事な性質があります。この種子は水と一緒にすると、とろみを出します。水と油を繋ぐ働きもあるので、ソースがまとまりやすくなる。香りだけの素材ではありません。

香りの行き先

フェヌグリーク

意外に近い

フェヌグリークのメープルのような香りは、このスパイスにしかありません。だから「カレーらしさ」を代わりに出せる素材が存在しない。抜くと消えるものがある、という意味では最も分かりやすいスパイスです。

一緒に使うと伸びる

甘い香ばしさを強める

ウッディに寄せる

フェヌグリークの香りが、どの方向へ伸びるか

意外に近い素材

カカオニブ

カレーの種子と、菓子の豆。乾煎りしたフェヌグリークの香りは、コーヒーやチョコレートにかなり近づきます。焙るという工程が同じものを生んでいて、重ねると香ばしさの層が厚くなります。

デーツ

苦い種子と、甘い果実。正反対ですが、フェヌグリークの甘さは焦げた砂糖の側にあります。デーツの濃い甘さと方向が揃うので、中東の料理でこの二つが同居するのは理にかなっています。

一緒に使うと伸びる素材

甘い香ばしさを強める ── カシア、オールスパイス、デーツ

メープルの側を伸ばす方向。フェヌグリークの甘さは焦げた砂糖に近いので、同じ方向の素材と重ねると厚くなります。

ウッディに寄せる ── クローブ、ブラックペッパー

甘さの下に骨格を通す方向。カレーの土台でこの組み合わせが多いのは、甘さだけにさせないためです。

香ばしさを重ねる ── カカオニブ、クミン、ターメリック

焙った香ばしさどうし。乾煎りしたフェヌグリークと組ませると、コーヒーやチョコレートに近い層ができます。

料理への応用

入れどき

はじめ、乾煎りする

軽く乾煎りしたホール

ナッツやコーヒーの香ばしさが加わる。

カレー豆料理マサラ

水に浸けておく

ホール

とろみが出る。水と油が繋がる。

ソースカレー

途中、パウダーで

パウダー

メープルの香りが全体に回る。

カレー煮込みマサラ
フェヌグリークを、いつ入れるか

はじめ、乾煎りする軽く乾煎りしたホール

弱火で軽く。ただし焦がすと強い苦みが出て、戻せません。色づく手前で止めてください。フェヌグリークは焦がしやすいスパイスの筆頭です。

水に浸けておくホール

一晩水に浸けると、種子のまわりがぬるりとします。これがとろみのもと。ソースをまとめたいときに使える性質です。

途中、パウダーでパウダー

具材に絡めてから水分を。パウダーは苦みが出やすいので、量を控えめに。

分量の三段階(2人分の目安

気配ほど小さじ1/8カレーらしさが出る。フェヌグリークとは気づかれない
効かせる小さじ1/4メープルの香りがわかる。ふだんはここ
主役にする小さじ1/2フェヌグリークの料理になる。苦みも出ます

苦みが出やすいスパイスです。他のスパイスより一段少なく見積もってください。多すぎたフェヌグリークは隠せません。

この食材と合う理由

豆、じゃがいも、なす、鶏、羊。それにトマト。カレーの世界の食材と広く合います。とろみを出す性質があるので、豆料理やソースでとくに使いやすい。「カレーらしさ」が欲しい場面なら、まずこれです。

繊細な白身魚や、菓子には向きません。甘い香りを持ちながら苦みも強いためです。

うまくいかないときの直し方

  • 苦い焦がしたか、入れすぎです。乾煎りは色づく手前で止めてください。苦みは戻せないので、作り直すほうが早い
  • 香りがしない乾煎りしていないか、量が少なすぎます。軽く煎ると香ばしさが立ちます
  • 硬くて挽けないとても硬い種子です。ミルの刃が傷むことがあるので、パウダーを買うほうが現実的です

一皿の設計例

豆のカレー。ひよこ豆やレンズ豆を煮るとき、フェヌグリークを小さじ1/4。それだけで「カレー粉の匂い」がします。とろみも自然につきます。

選び方・保存

黄土色の、角ばった硬い種子です。とても硬いので、家庭のミルでは苦労します。

ホールなら数年保ちます。パウダーは苦みが出やすいので、少量ずつ。

密閉して冷暗所へ。乾煎りしてから使うのが基本なので、生のまま保存で構いません。

Inspiceでは、どう使っているか

Inspiceは、フェヌグリークを4つのブレンドに使っています。スパイスカレー4作のうち3作と、ディッシュ シンフォニーNo.1です。

スパイスカレー シンフォニーNo.3では、原材料表の二番目。コリアンダーに次ぐ位置です。この一本を「たべるブーケガルニ」と呼んでいますが、ハーブ寄りの構成のなかで、カレーらしさを担保しているのがフェヌグリークです。

No.1では、メースとまったく同じ重さで置いてあります。カレーらしさと、渋みのない温かみ。対等に並べた配置です。

よくある質問

フェヌグリークはなぜカレーの匂いがするのですか?

逆です。フェヌグリークの匂いが「カレーの匂い」として認識されている、というほうが正確です。市販のカレー粉に必ず入っていて、この香りを出せる素材が他にありません。抜くと、何かが足りないカレーになります。

苦くなってしまいます

焦がしているか、入れすぎです。乾煎りは色づく手前で止めてください。フェヌグリークは焦がしやすいスパイスの筆頭で、苦みは戻せません。量も他のスパイスより一段少なく。

カスリメティとは違いますか?

同じ植物です。種子がフェヌグリーク、葉を乾かしたものがカスリメティ。香りの方向は近いのですが、葉のほうが軽やかで、料理の仕上げに使われます。

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