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Inspiceスパイス事典オールスパイス
オールスパイス(オールスパイス)
Allspice

オールスパイス

シナモン・クローブ・ナツメグを一粒で思わせる香り

オールスパイスは、フトモモ科の常緑樹の、熟す前の果実を乾かしたスパイスです。名前は「複数のスパイスの香りがする」ことから付きました。混合スパイスではありません。

オールスパイスとは

学名
Pimenta dioica
科名
フトモモ科
使用部位
熟す前の果実
原産地
ジャマイカ・中央アメリカ
主な産地
ジャマイカ、メキシコ、ホンジュラス、グアテマラ
和名
百味胡椒(ひゃくみこしょう)、三香子
別名
ピメント、ジャマイカペッパー、クローブペッパー
流通の形
ホール/パウダー

木は7〜8年めから実をつけ、そこから百年ほど収穫が続きます。香りは種ではなく、しわの寄った外側の殻に詰まっています。

どんな香り

クローブに似た甘さ、シナモンに似た温かさ、ナツメグに似た苦み。ひとつの実からこの三つが同時に立ち上がります。名前が「オール」なのは、後から付けられた愛称ではなく、最初に嗅いだ人の正直な感想だったのだと思います。

その理由ははっきりしています。オールスパイスには「これがオールスパイスだ」と言い切れる固有の香りがありません。持っている香りを、全部よそのスパイスと分け合っている。分子の側から見ても、これほど純粋な橋渡し役はほかにありません。

そして乾煎りすると、もうひとつの顔が出ます。焙った香ばしさが加わって、燻したような層ができる。ジャマイカの料理でオールスパイスが焼きものに使われるのは、この性質と無関係ではないはずです。

香りの行き先

オールスパイス

意外に近い

オールスパイスはローリエと、香りの成分を五つ分け合っています。これはスパイス全体を見渡しても最大の共有数です。二つを同じ鍋に入れると、香りが増えるのではなく厚くなる。

一緒に使うと伸びる

温かみを複雑にする

フローラルに開く

オールスパイスの香りが、どの方向へ伸びるか

意外に近い素材

ローリエ

煮込みに沈める地味な葉と、甘く華やかな実。使われ方が違いすぎて並べて考えることが少ない組み合わせです。ところが香りの成分を五つ共有していて、これはスパイス全体でも最大。二つを同じ鍋に入れると、香りが増えるのではなく厚くなります。

ブラックペッパー

甘い実と、辛い実。正反対に見えますが、香りの成分を四つ分け合っています。オールスパイスが「ジャマイカペッパー」「クローブペッパー」と胡椒の名で呼ばれてきたのは、外見が似ているだけの理由ではないはずです。

一緒に使うと伸びる素材

温かみを複雑にする ── ナツメグ、カシア、クローブ

同じ方向を厚くする組み合わせ。オールスパイスがこの三つの香りを兼ねているので、どれと組んでも自然に馴染みます。菓子でも肉料理でも効きます。

清涼感を足す ── カルダモン、ブラックカルダモン、ローリエ

甘く温かいだけになりがちなところに、抜け道をつくる方向。ブラックカルダモンを選ぶと燻香が加わり、ジャマイカのジャーク料理に近づきます。

辛さと組む ── ブラックペッパー、スターアニス、ハバネロ

甘い香りの隣に刺激を置く方向。ジャマイカ料理でオールスパイスと唐辛子が必ず一緒にいるのは、この釣り合いのためです。

フローラルに開く ── コリアンダー

重さを抜いて、香りを上へ逃がす方向。どちらも固有の香りを持たない者どうしなので、混ぜても濁りません。

料理への応用

入れどき

はじめ、砕いて油に

ホール

殻を割ると香りが出る。丸のままではあまり香らない。

煮込みカレーマリネ

途中、下味に

パウダー

肉のクセと釣り合い、加熱で香ばしさが出る。

ハンバーグソーセージジャークチキン

仕上げに、乾煎りして

乾煎りしたホール

焙った香ばしさが加わり、燻したような層ができる。

ロースト焼き野菜スープ
オールスパイスを、いつ入れるか

はじめ、砕いて油にホール

香りは殻に詰まっているので、包丁の腹で軽く潰してから油へ。丸のまま入れると、ほとんど香りません。数えて入れると取り出すときに困りません。

途中、下味にパウダー

ひき肉に混ぜたり、肉にすり込んだり。オールスパイスは肉との相性が突出していて、とくに牛肉や濃い味の煮込みで力を発揮します。

仕上げに、乾煎りして乾煎りしたホール

弱火でゆっくり煎ってから粗く砕きます。焦がすと苦みだけが残るので、香りが立ったところで止めること。

分量の三段階(2人分の目安

気配ほどホール3粒料理の底が深くなる。オールスパイスとは気づかれない
効かせるホール6粒甘さと温かさがわかる。ふだんはここ
主役にする小さじ1(パウダー)オールスパイスの料理になる

クローブほど強くないので、少し多めでも壊れません。クローブの代用にするなら、1.5倍くらいが目安です。

この食材と合う理由

牛肉、豚肉、鴨。それにトマト、かぼちゃ、りんご。肉との相性が突出しています。オールスパイス一つで甘さと温かさと苦みが揃うので、他のスパイスを何本も並べなくても料理が成立する。忙しい日のスパイスでもあります。

繊細な白身魚や、香りの淡い野菜料理には強すぎます。使うなら量を減らして、他の素材の後ろに置いてください。

うまくいかないときの直し方

  • 香りがしない丸のまま入れています。香りは殻に詰まっているので、必ず砕いてから使ってください
  • クローブっぽくなりすぎたオールスパイスは甘さの側が強く出やすい素材です。胡椒を少し足すと締まります
  • 香りが落ちてきたホールならほぼ落ちません。パウダーは半年ほどです。ホールに切り替えてください

一皿の設計例

オールスパイスのミートボール。ひき肉に塩とパウダーをひとつまみ、玉ねぎのみじん切りを混ぜて焼くだけ。他のスパイスを足さなくても、それらしい香りになります。

選び方・保存

ホールはほぼ無期限に保ちます。パウダーは半年ほど。オールスパイスは特に、ホールで買う価値の大きいスパイスです。

しわの寄った茶色い球で、黒胡椒よりひと回り大きい。潰したときに油の匂いが立つものが新しい。

密閉して冷暗所へ。数えて使う習慣をつけると、煮込みから取り出し忘れることがありません。

Inspiceでは、どう使っているか

Inspiceは、オールスパイスを4つのブレンドに使っています。少ないほうですが、置き方の幅は最も広い一本です。

フレアラインMELLOW FIREでは、シナモンとクローブと一緒に、はっきり香る位置に置いてあります。三つは香りの成分を分け合っている仲間で、束ねると甘さの層が厚くなる。カカオニブの苦みとハバネロの熱を受け止めるための厚みです。

the cocoaでは逆に、表の中ほどでブラックペッパーと同じ重さに置いてあります。甘い側と辛い側から、まったく同じ量で挟む。この二つは香りの成分を四つ分け合っているので、同量にすると互いを打ち消さずに厚くなります。

よくある質問

オールスパイスは混合スパイスですか?

いいえ、一つの植物の実です。クローブ・シナモン・ナツメグを合わせたような香りがすることから、この名前が付きました。混ぜたものではありません。

クローブの代用になりますか?

いちばん近い方向です。ただしクローブほど強くないので、同じ量では物足りなく感じます。1.5倍くらいが目安。逆に、クローブを入れすぎて失敗しやすい人には、こちらのほうが扱いやすいはずです。

ホールとパウダー、どちらを買えばいいですか?

ホールです。ほぼ無期限に保ちますし、乾煎りして香ばしさを足すという使い方はホールでしかできません。ただし丸のままでは香らないので、必ず砕いてください。

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