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シナモン・クローブ・ナツメグを一粒で思わせる香り
オールスパイスは、フトモモ科の常緑樹の、熟す前の果実を乾かしたスパイスです。名前は「複数のスパイスの香りがする」ことから付きました。混合スパイスではありません。
木は7〜8年めから実をつけ、そこから百年ほど収穫が続きます。香りは種ではなく、しわの寄った外側の殻に詰まっています。
クローブに似た甘さ、シナモンに似た温かさ、ナツメグに似た苦み。ひとつの実からこの三つが同時に立ち上がります。名前が「オール」なのは、後から付けられた愛称ではなく、最初に嗅いだ人の正直な感想だったのだと思います。
その理由ははっきりしています。オールスパイスには「これがオールスパイスだ」と言い切れる固有の香りがありません。持っている香りを、全部よそのスパイスと分け合っている。分子の側から見ても、これほど純粋な橋渡し役はほかにありません。
そして乾煎りすると、もうひとつの顔が出ます。焙った香ばしさが加わって、燻したような層ができる。ジャマイカの料理でオールスパイスが焼きものに使われるのは、この性質と無関係ではないはずです。
香りの行き先
煮込みに沈める地味な葉と、甘く華やかな実。使われ方が違いすぎて並べて考えることが少ない組み合わせです。ところが香りの成分を五つ共有していて、これはスパイス全体でも最大。二つを同じ鍋に入れると、香りが増えるのではなく厚くなります。
甘い実と、辛い実。正反対に見えますが、香りの成分を四つ分け合っています。オールスパイスが「ジャマイカペッパー」「クローブペッパー」と胡椒の名で呼ばれてきたのは、外見が似ているだけの理由ではないはずです。
同じ方向を厚くする組み合わせ。オールスパイスがこの三つの香りを兼ねているので、どれと組んでも自然に馴染みます。菓子でも肉料理でも効きます。
甘く温かいだけになりがちなところに、抜け道をつくる方向。ブラックカルダモンを選ぶと燻香が加わり、ジャマイカのジャーク料理に近づきます。
甘い香りの隣に刺激を置く方向。ジャマイカ料理でオールスパイスと唐辛子が必ず一緒にいるのは、この釣り合いのためです。
重さを抜いて、香りを上へ逃がす方向。どちらも固有の香りを持たない者どうしなので、混ぜても濁りません。
入れどき
はじめ、砕いて油に
ホール
殻を割ると香りが出る。丸のままではあまり香らない。
途中、下味に
パウダー
肉のクセと釣り合い、加熱で香ばしさが出る。
仕上げに、乾煎りして
乾煎りしたホール
焙った香ばしさが加わり、燻したような層ができる。
香りは殻に詰まっているので、包丁の腹で軽く潰してから油へ。丸のまま入れると、ほとんど香りません。数えて入れると取り出すときに困りません。
ひき肉に混ぜたり、肉にすり込んだり。オールスパイスは肉との相性が突出していて、とくに牛肉や濃い味の煮込みで力を発揮します。
弱火でゆっくり煎ってから粗く砕きます。焦がすと苦みだけが残るので、香りが立ったところで止めること。
クローブほど強くないので、少し多めでも壊れません。クローブの代用にするなら、1.5倍くらいが目安です。
牛肉、豚肉、鴨。それにトマト、かぼちゃ、りんご。肉との相性が突出しています。オールスパイス一つで甘さと温かさと苦みが揃うので、他のスパイスを何本も並べなくても料理が成立する。忙しい日のスパイスでもあります。
繊細な白身魚や、香りの淡い野菜料理には強すぎます。使うなら量を減らして、他の素材の後ろに置いてください。
オールスパイスのミートボール。ひき肉に塩とパウダーをひとつまみ、玉ねぎのみじん切りを混ぜて焼くだけ。他のスパイスを足さなくても、それらしい香りになります。
ホールはほぼ無期限に保ちます。パウダーは半年ほど。オールスパイスは特に、ホールで買う価値の大きいスパイスです。
しわの寄った茶色い球で、黒胡椒よりひと回り大きい。潰したときに油の匂いが立つものが新しい。
密閉して冷暗所へ。数えて使う習慣をつけると、煮込みから取り出し忘れることがありません。
Inspiceは、オールスパイスを4つのブレンドに使っています。少ないほうですが、置き方の幅は最も広い一本です。
フレアラインMELLOW FIREでは、シナモンとクローブと一緒に、はっきり香る位置に置いてあります。三つは香りの成分を分け合っている仲間で、束ねると甘さの層が厚くなる。カカオニブの苦みとハバネロの熱を受け止めるための厚みです。
the cocoaでは逆に、表の中ほどでブラックペッパーと同じ重さに置いてあります。甘い側と辛い側から、まったく同じ量で挟む。この二つは香りの成分を四つ分け合っているので、同量にすると互いを打ち消さずに厚くなります。
オールスパイスは、Inspiceの4つのブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。
いいえ、一つの植物の実です。クローブ・シナモン・ナツメグを合わせたような香りがすることから、この名前が付きました。混ぜたものではありません。
いちばん近い方向です。ただしクローブほど強くないので、同じ量では物足りなく感じます。1.5倍くらいが目安。逆に、クローブを入れすぎて失敗しやすい人には、こちらのほうが扱いやすいはずです。
ホールです。ほぼ無期限に保ちますし、乾煎りして香ばしさを足すという使い方はホールでしかできません。ただし丸のままでは香らないので、必ず砕いてください。
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