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粒のままは香ばしく、潰せば辛い二面性
マスタードは、アブラナ科の植物の種子です。辛みは種のなかに用意されていません。傷つけて水と合わせたときに、はじめて生まれます。
ホワイト・ブラウン・ブラックの三種があり、辛さも用途も違います。ヨーロッパでは練って調味料に、南アジアでは油ではじけさせて料理の入口に使われてきました。
ホールのまま口に入れても、ほとんど何も起きません。噛むと少し苦い程度。マスタードの辛みは、種のなかに完成品として入っているのではなく、細胞が壊れて水と出会ったときにはじめて作られるからです。
だから辛さは三段階に制御できます。ホールのまま油で加熱すれば、辛みは立たず香ばしさだけが出る。粉にして水と混ぜれば、数分後に鋭い辛みが立ち上がる。酢やワインで練れば、その辛みに角が取れて穏やかになる。同じ種子から三つの顔が取り出せます。
そして鼻に抜けます。舌が焼ける唐辛子とも、舌を刺す胡椒とも違う。上へ突き抜けて、すぐ消える。この消え方の速さが、料理を重くしない理由です。
香りの行き先
鼻に抜ける刺激と、噛みしめる苦み。菓子と料理くらい離れて見えますが、これが驚くほどよく噛み合います。カカオの苦みがマスタードの刺激に厚みを与え、マスタードがカカオの重さを持ち上げる。互いの足りないところを、ちょうど埋め合う関係です。
どちらも焙ると香ばしさが生まれる種子です。マスタードを油ではじけさせる工程と、ごまを煎る工程は、同じことをしている。同じ鍋で同時に扱えるので、南インドの料理では隣り合わせにいることがよくあります。
種類の違う辛さを隣に置くと、マスタードの鼻に抜ける刺激が単独で目立たなくなります。辛さを減らすのではなく、散らす考え方です。
乾いた土や樹脂の側へ。マスタードの刺激に落ち着きが出ます。カレーの土台で、この三つが同居することが多いのはこの関係です。
どちらも焙ると香ばしさが生まれる種子です。マスタードを油ではじけさせる工程と相性がよく、同じ鍋で同時に扱えます。
意外なほどよく噛み合う組み合わせです。カカオの苦みとマスタードの刺激が、互いの足りないところを埋めます。
入れどき
はじめ、油ではじけさせる
ホール
辛みは立たず、香ばしさだけが出る。
途中、水と合わせる
パウダー
数分置くと辛みが立ち上がる。急がないこと。
最後、練ったものを
練りマスタード
酢やワインで角が取れ、酸と一緒に効く。
熱した油にホールを入れると、ぱちぱちとはじけます。この段階では水がないので辛みは生まれず、焙った香ばしさだけが出る。南インドの料理が必ずここから始まるのは、この性質を使っているからです。蓋を用意しておくこと。
粉を水でといて、5〜10分置きます。ここではじめて辛みが生まれる。すぐ使うと辛くないので、待つのが要点です。熱湯を使うと辛みが出ないので、必ず水かぬるま湯で。
火から下ろしてから。練りマスタードは加熱すると辛みが飛ぶので、仕上げに加えるか、添えるかです。
ホールを油で使うぶんには辛くならないので、量を増やしても失敗しません。辛さが出るのは水と合わせたときだけです。
豚肉、鶏肉、白身魚、じゃがいも、キャベツ、豆。油脂と澱粉を持つ食材が得意です。マスタードの刺激は鼻に抜けてすぐ消えるので、脂の重さを切るのに向いています。
菓子と果物には使われません。刺激が甘さと噛み合わないためです。
マスタードの油はじけ。熱した油に小さじ1/2、蓋をしてはじけさせ、そのままじゃがいもの炒め物にかけるだけ。辛くはならず、香ばしさだけが移ります。
ホールは黄色(ホワイト種)と赤褐色(ブラウン種)があります。ホワイトのほうが穏やかで、日本で手に入りやすいのもこちらです。
ホールなら数年保ちます。辛みが完成品として入っていないので、香りが飛ぶという心配が他のスパイスより小さい。
粉は湿気を吸うと固まります。密閉して冷暗所へ。水と合わせた後は、その日のうちに使い切ってください。
Inspiceは、マスタードを4つのブレンドに使っています。数は多くありませんが、置き場所は要所です。
スパイスカレーのNo.1とNo.2では、原材料表の二番目。コリアンダーに次ぐ位置です。カレーの土台をコリアンダーの明るさに置いたうえで、その隣に刺激を並べる——という組み立てになっています。
フレアラインNUTTY FLAREでは、カカオニブと同じ一本に入れてあります。カカオの苦みとマスタードの刺激は、意外なほどよく噛み合う。ナッツの香ばしさを主役にした一本で、その底を二つで支えています。
マスタードは、Inspiceの4つのブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。
マスタードの辛みは、種のなかに完成品として入っていないからです。細胞が壊れて水と出会ったときにはじめて作られる。油だけでは水がないので、辛みは生まれず香ばしさだけが出ます。
待ち時間が足りないか、熱湯を使っています。水かぬるま湯でといて5〜10分置いてください。熱湯だと反応が進まず、辛みが出ません。
和がらしは主にブラウン種、洋がらしはホワイト種が中心です。和がらしのほうが鋭く鼻に抜け、洋がらしは穏やかで持続します。練りマスタードは酢やワインを加えるため、さらに角が取れています。
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