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Inspiceスパイス事典ブラックカルダモン
ブラックカルダモン(ブラックカルダモン)
Black Cardamom

ブラックカルダモン

燻したような煙の香り。一皿に「火」の記憶を灯す

ブラックカルダモンは、ヒマラヤ東部で採れるショウガ科の果実です。カルダモンと名がつきますが別属の別種で、香りもまるで違います。

ブラックカルダモンとは

学名
Amomum subulatum
科名
ショウガ科
使用部位
果実(莢と種子)
原産地
ヒマラヤ東部
主な産地
インド・シッキム州、ネパール、ブータン
和名
大豆蔲(だいずく)
別名
ブラウンカルダモン、ラージカルダモン、黒い黄金
流通の形
ホール(莢)

収穫した莢を、直火の上で一日から三日かけて乾かします。この工程で燻された香りが生まれる。加工が香りをつくっている、わかりやすい例です。

どんな香り

煙です。焚き火、燻製、樟脳。カルダモンのあの華やかな清涼感を期待して嗅ぐと、まったく違うものが来ます。名前が似ているせいで、いちばん誤解されているスパイスかもしれません。

この煙は、後から付けたものではありません。莢を直火で乾かす工程そのものが、燻製の香りをつくります。加工が素材の性格を決めている——製法と香りが直結している例です。

そして、この香りを天然で持つ素材はほとんどありません。料理に「火で炙った記憶」を入れたいとき、燻製器を使わずにそれができる。唐辛子を使わずに深い刺激を出したい場面でも、この素材が答えになります。

香りの行き先

ブラックカルダモン

意外に近い

カルダモンとは別属の別種です。「緑のカルダモンの劣った代用品」と言われることがありますが、燻された香りはブラックカルダモンにしかありません。代用ではなく、別の道具です。

一緒に使うと伸びる

焙った香ばしさと組む

ブラックカルダモンの香りが、どの方向へ伸びるか

意外に近い素材

椎茸

燻された莢と、干した茸。どちらも「乾かす工程」が香りをつくった素材です。旨みと煙という役割の違いはありますが、肉を使わない料理に深さを出すという点で仕事が重なります。

キャラウェイ

ヒマラヤの莢と、ヨーロッパのパンの種子。使われる料理がまったく違いますが、香りの成分を三つ分け合っています。燻された香りとアニスのような甘さが、意外にもよく噛み合います。

一緒に使うと伸びる素材

清涼感を重ねる ── カルダモン、オールスパイス、ローリエ

煙の下に、抜け道をつくる方向。ブラックカルダモンだけだと重くなるので、上へ逃がす相手が要ります。

甘さで包む ── ナツメグ、カシア、メース

燻された香りに甘さを添えると、料理の底が深くなります。長く煮込む料理で効きます。

焙った香ばしさと組む ── パプリカ、白ごま、カカオニブ

焙る・燻すという工程を共有する素材どうし。煙の層が二重になります。

料理への応用

入れどき

はじめ、莢ごと油に

莢ごと

煙の香りが油に移る。香りは殻にある。

カレー煮込みビリヤニ

長く煮込む

莢ごと

煙が全体に回る。時間が要る。

肉の煮込みフォー豆料理

乾煎りしてから砕く

乾煎りしたホール

ローストの香ばしさが加わる。

ガラムマサララブ焼き物
ブラックカルダモンを、いつ入れるか

はじめ、莢ごと油に莢ごと

莢ごと入れて、最後に取り出します。燻された香りは殻にあるので、割らずに使うほうが持ちます。数えて入れてください。

長く煮込む莢ごと

硬い莢からゆっくり出てくるので、長時間の煮込みほど向いています。四川の煮込みやベトナムのフォーで使われるのは、この性質のためです。

乾煎りしてから砕く乾煎りしたホール

軽く煎ってから砕きます。煙の上に焙りの香りが乗って、層が二重になります。

分量の三段階(2人分の目安

気配ほど1/2個料理の底が深くなる。煙とは気づかれない
効かせる1個燻された香りがわかる。ふだんはここ
主役にする2個燻製の料理になる

莢が大きいので、1個でもかなり効きます。カルダモンの感覚で数を入れると、料理が煙だらけになります。

この食材と合う理由

羊、牛、豚、豆、じゃがいも、きのこ。味の濃いものと、地味なもの。ブラックカルダモンは煙の香りで料理に「火の記憶」を足すので、素材が地味なほど効果がはっきりします。肉を使わない料理に燻製の深さを出したいときにも使えます。

繊細な白身魚や、菓子には向きません。煙が料理の性格を変えてしまいます。

うまくいかないときの直し方

  • 煙くなりすぎた入れすぎです。莢が大きいので1個でもかなり効きます。次は半分に割って半量から
  • 香りが出ない加熱時間が足りていません。硬い莢からゆっくり出てくるので、煮込みなら早めに入れてください
  • カルダモンと同じに使ったら別物になった別属の別種です。カルダモンは華やかな清涼感、ブラックカルダモンは燻された煙。代用にはなりません

一皿の設計例

豆の煮込みにブラックカルダモン。ひよこ豆やレンズ豆を煮るとき、莢を1個。肉を入れていないのに、燻したような深さが出ます。

選び方・保存

黒褐色の大きな莢で、表面に縦の筋があります。緑のカルダモンの三倍ほどの大きさ。

ホールなら一年以上保ちます。莢のまま保存してください。割ると香りが早く落ちます。

香りが強いので、他のスパイスと同じ容器に入れないでください。

Inspiceでは、どう使っているか

Inspiceは、ブラックカルダモンを3つのブレンドに使っています。

Inspiceのブレンドには唐辛子を使っていないものが多くあります。それでも「深い刺激」や「火で炙ったような印象」が要る場面がある。そこでブラックカルダモンを選んでいます。熱ではない深さを、燻された香りで出す考え方です。

スパイスカレー シンフォニーNo.1では、メースと隣り合う位置に置いてあります。同じ果実から採れるナツメグとメースは、ブラックカルダモンと香りの成分をよく分け合っている。煙と甘い温かみが噛み合う配置です。

ブラックカルダモンが働いている商品

ブラックカルダモンは、Inspiceの3つのブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。

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よくある質問

カルダモンの代わりになりますか?

なりません。別属の別種で、香りがまったく違います。カルダモンは華やかな清涼感、ブラックカルダモンは燻された煙。「緑のカルダモンの劣った代用品」と言われることがありますが、燻された香りはこちらにしかありません。

なぜ煙の香りがするのですか?

収穫した莢を、直火の上で一日から三日かけて乾かすからです。この工程そのものが燻製になっている。後から香りをつけているのではなく、加工が香りをつくっています。

どのくらい入れればいいですか?

2人分なら1個で十分です。莢が大きく、カルダモンの三倍ほどのサイズがあるので、同じ感覚で数を入れると料理が煙だらけになります。

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