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「スパイスの女王」。甘い香りの代名詞
シナモンは、クスノキ科の常緑樹の樹皮を乾かしたスパイスです。日本で「シナモン」として売られているものの多くは、実際にはカシアという別の木の樹皮です。
若い枝を二年に一度刈り取り、外側を削って内側の樹皮だけを剥ぎ、乾かしながら巻きます。細く、色が薄く、指で崩せるほどもろいものが上等とされます。
甘い香りがするのに、舐めても甘くありません。シナモンには甘味成分がないからです。それでも「甘い」と感じるのは、香りが甘さの記憶を呼ぶから。だからシナモンは、砂糖を増やさずに甘さを強く感じさせることができます。
カシアとの違いは、太さです。シナモンは軽く、柑橘のような爽やかさが前にある。カシアは濃く、太く、まっすぐ。どちらが上ということではなく、料理によって選ぶものです。りんごや焼き菓子にはシナモン、煮出すチャイにはカシアが向きます。
香りの主成分は水に溶けません。油とアルコール、それに蒸気が運びます。水だけで煮出しても、思ったほど香りが出ないのはこのためです。
香りの行き先
辛さの素材と甘い香りの素材。別世界に見えますが、香りの成分を分け合っています。胡椒とシナモンを同じ鍋に入れると妙に落ち着くのは、このためです。
乾いた土と、甘い樹皮。組み合わせとしては意外ですが、土と甘さは対立しません。むしろ土が下に敷かれると、シナモンの温かみが長く続きます。
甘い香りに樹木の乾いた側を足す方向。菓子ではなく料理でシナモンを使いたいとき、この二つが橋になります。肉の煮込みが得意分野です。
甘さの層を厚くする方向。ただしクローブは強いので控えめに。スターアニスとアニスはリコリスの香りを持ち込むので、甘さの質そのものが変わります。
甘さの上に花と柑橘を乗せる方向。重くなりがちなシナモンに、高さが出ます。果物を使った料理で効きます。
甘い香りの下に土を敷く。シナモンの温かみが長く続くようになります。北アフリカや中東の肉料理でこの組み合わせが多いのは、偶然ではありません。
入れどき
はじめ、油に
スティック
樹皮の奥から香りが出るまで時間がかかる。最初に入れる。
途中、蓋をして煮る
スティック
蒸気が香りを運び、鍋全体に回る。
最後、パウダーで
パウダー
甘い香りがまっすぐ立つ。加熱しないほうが強い。
弱火の油にスティックごと入れます。繊維質の樹皮から香りを引き出すには時間が要るので、他のどのスパイスよりも早く入れて構いません。折らずに入れて、最後に取り出すのが扱いやすい。
香りは蒸気にも乗ります。蓋をしてことこと煮ると、上から降りてきた香りが全体に行き渡る。牛乳やワインで煮るなら、この方法がいちばん確実です。
仕上げに振ります。パウダーは加熱すると急速に香りを失うので、火から下ろしてから。砂糖と混ぜておくと均一に散らせます。
砂糖を減らしたいときの助けになります。甘味を足さずに、甘さの感じ方だけを上げられるからです。ただし多すぎると渋みが出ます。
りんご、芋類、かぼちゃ、赤ワイン、チョコレート。もともと甘い香りを持っている食材と組むと、その甘さが増幅されます。逆に肉と合わせるときは、胡椒やクミンを添えて甘さ一辺倒にしないのがコツです。
淡白な白身魚や、すっきりした出汁の料理には向きません。シナモンの甘い香りが料理の輪郭を鈍らせます。
シナモンソルト。塩とパウダーを4対1で混ぜるだけです。素揚げしたかぼちゃや里芋にふると、甘さが立ち上がります。砂糖は使っていません。
パウダーは半年ほどで香りを失います。スティックなら一年は保ちます。買うならスティックのほうが確実です。
色が薄く、細く、もろいものほど上等とされます。何層にも巻かれていて、指で押すとぱりっと崩れる。これがシナモンの見分け方です。
密閉して冷暗所へ。香りの成分は揮発しやすいので、大袋よりも使い切れる量を。
Inspiceがシナモンを使っているのは、フレアラインMELLOW FIREの一本だけです。ほかの商品ではカシアを使っています。
使い分けの理由は太さです。チャイのように煮出して飲むものには、まっすぐ濃いカシアが要る。MELLOW FIREはカカオニブの香ばしさとハバネロの熱を同居させる設計なので、そのあいだに架ける橋には、軽くて柑橘のあるシナモンのほうが合いました。
同じ一本にクローブとオールスパイスも入れてあります。この三つは香りの成分を分け合っている仲間で、束ねると甘さの層が厚くなる。カカオの苦みを受け止めるための厚みです。
シナモンは、Inspiceの1つのブレンドに入っています。以下は原材料表の順位から見た層です。 ただし香りの強さは素材ごとに大きく違うので、量が少なくても主張が大きいことがあります。
別の木です。シナモンはスリランカ産のセイロンニッケイ、カシアは中国やベトナム産の別種。シナモンは軽く柑橘の爽やかさがあり、カシアは濃く太い香りです。日本で安価に売られているものの多くはカシアです。
スティックです。香りの保ちが倍以上違いますし、煮込みに入れて最後に取り出すという使い方ができます。パウダーが必要なら、そのつどおろし金で削るのがいちばん香ります。
香りは甘いですが、味に甘さはありません。舐めても砂糖のような甘味は感じられない。それでいて他の素材の甘さを強く感じさせるので、砂糖を減らしたいときの助けになります。
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