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ハイカカオにスパイスが合う理由|約600の香り分子でひもとく

ハイカカオにスパイスを合わせるのは、風変わりな思いつきではありません。カカオには約600種の香り分子があり、その一つひとつに「増幅してくれる相手」がいます。the cocoa「ハイカカオとスパイスのココア」に入る9種のスパイスと岩塩は、その相手として選ばれたものでした。
カカオの苦みは、ひとつの味ではない
カカオの風味化合物は約600種。栽培地や品種、加工の仕方でその比率が変わります。中心にあるのはイソバレルアルデヒドという分子で、チョコレートらしさと、桃のような含みを持っています。苦みのほうはカフェインとテオブロミンから来ていて、焙煎するとピラジン類に変わり、ローストナッツの香ばしさになる。
つまりハイカカオの一杯には、少なくとも四つの顔があります。ローストナッツの苦み、チョコレートの甘い脂っぽさ、エステル類のフルーティさ、ケトン類の蜂蜜のような甘さ。the cocoa の配合を分子で見ていくと、9種のスパイスはこの四つに分かれて置かれていました。
ウッディ ── 消えない最小の量
ピラジンの苦みは、木質の香りを持つスパイスと組むと「焦げ」ではなく「香ばしさ」に寄ります。ここを担当するのがクミンと黒コショウ(テリーチェリー)です。
クミンは、原材料表のいちばん後ろに近いところにいます。Inspice全27商品を見渡しても、これより少ない配合はありません。それでもクミンアルデヒドという分子は、このスパイスにしか無い。抜けば、一杯からその香りは完全に消えます。ごく微量というのは「入っていないに等しい」ということではなく、「消えない最小」という組み立てです。
甘い ── トンカ豆のクマリンが、バニラの代わりをする
イソバレルアルデヒドのチョコレート感は、甘い香りのスパイスと組むと伸びていきます。ここに置かれているのがトンカ豆です。原材料表では、カカオのすぐ後ろ、3番目に来ます。
トンカ豆は種子の8割前後がクマリンという、ほとんどクマリンの塊のような素材です。桜餅の葉に似た、バニラより深いところで甘い香り。the cocoa の化合物を数えると、クマリンは上位に食い込みます。バニラを一粒も使わずに、バニラ的な甘さの気配だけを置く。しかも同じ配合表にはカシアが入っていて、こちらもクマリンを二次的に持っています。甘さの橋が、静かに二本架かっている。
フルーティ ── バスクの唐辛子は、気配だけ
カカオのエステル類は、柑橘やフローラルの香りと組むと立ち上がります。担当はコリアンダーと、原材料名に「唐辛子(バスク)」と書かれているエスプレット種です。フランス・バスク地方の保護品種で、オレンジに近い赤色とフルーティさで知られ、辛味はマイルド。
入れているのはごく微量です。辛さを足すためではありません。熱の気配だけを置いて、カカオのフルーティさを起こすための一滴です。
蜂蜜 ── 甘口パプリカという教科書どおり
ケトン類の蜂蜜のような甘さを増やすのは、カシア、オールスパイス、そしてパプリカ。インスパイスの調香味士は、カカオの相手として「甘口のパプリカ」を選びました。甘さを強めると同時に、土の香りをもたらすからです。
the cocoa のパプリカも、ごく微量。それでもパプリカ固有のアセトインと酢酸エチルは、この一杯ではパプリカだけが持ち込んでいます。もうひとつ。黒コショウとオールスパイスは、まったく同じ分量にしております。この二つはピネン・フェランドレン・ミルセン・リナロールの四つを共有していて、Inspice全商品のなかでも最小単位の一致です。
岩塩は、香りではなく輪郭を担当する
the cocoa には岩塩も入っています。岩塩は塩化ナトリウムと微量ミネラルで、香りの分子をほとんど持ちません。だから香りの計算には出てこない。それでも入っているのは、甘さと苦みの輪郭を立てるためです。砂糖不使用のこのココアで、岩塩は味覚のほうから設計に参加しています。
ごく微量が設計になるということ
一杯の土台はピュアココアとカカオニブ。そこに9種のスパイスと岩塩が入りますが、原材料表の下のほうに並ぶいくつかは、ふつうなら誤差として流れてしまうほどの量です。
けれど分子で見ると、その一つひとつに役目がありました。0.01g単位で香りの設計を行うインスパイスが贈る「ハイカカオとスパイスのココア」。緻密な組み立てから生まれる唯一無二の味わいをお楽しみください。
よくある質問
Q. ハイカカオのココアは苦いですか?
A. カカオの苦みはカフェインとテオブロミンに由来し、焙煎でローストナッツのような香ばしさに変わります。the cocoa は砂糖不使用なので、甘さはお好みで足していただく設計です。牛乳や豆乳、はちみつやメープルシロップなど、加えるもので印象がかなり変わります。
Q. the cocoa は辛いですか?
A. 辛さを目的にした配合ではありません。入っているのはバスク地方のエスプレット種で、辛味のマイルドな品種をごく微量だけ。カカオのフルーティさを起こすための一滴なので、辛いココアにはなりません。
Q. スパイスは何種類入っていますか?
A. 9種類のスパイスと岩塩です。トンカ豆、黒コショウ(テリーチェリー)、オールスパイス、ナツメグ、唐辛子(バスク)、カシア、パプリカ、コリアンダー、クミン。ベースはピュアココアとカカオニブで、砂糖は使っていません。










