ただの調味料じゃない。金沢発・INSPICEがつくる“香りのある食卓”の秘密

ただの調味料じゃない。金沢発・INSPICEがつくる“香りのある食卓”の秘密

スパイスは調味料ではなく、ひとつの“世界”である。──INSPICEの香味設計とブレンド哲学

INSPICEのスパイスブレンドには、共通する特徴があります。
それは「香水のように立ち上がり、深く、印象的な残り香を持つこと」。

ネーミングやパッケージに物語があるように、ブレンドの構成そのものも、感情や記憶に訴えかけるように設計されています。

たとえば、「DISH SYMPHONY」シリーズ。

この調味料シリーズは、ただ料理の味を整えるものではなく、“香りの風景”を料理にインストールすることを目的に作られています。

開発にあたって私たちがまず行うのは、「どんな場所に立って、どんな空気を吸っているのか」を想像すること。

湿度、季節、朝か夜か。
その空間に流れる会話や、聴こえてくる音。
火のそばにいるのか、森の中なのか、古い市場の喧騒の中か。
そうしたディテールの積み重ねが、香りの“情景”をつくります。

そしてその空気を、スパイスで描き出していく。
フェヌグリークの温かみ、メースの静かな苦味、ローストチャナの穀物感。
これらは単体ではただの素材ですが、ある設計思想のもとに組み合わさることで、ひとつの“香味世界”になります。

このとき重要なのが、スパイスそれぞれが持つ風味化合物の知見です。
たとえば、ロングペッパーが持つピペリンとジヒドロピペリン。マカウが持つシトラールやゲラニアール。
それらの化合物の「揮発の順番」や「持続性」、「他成分との親和性」などを、香水の調香師のように読み解きながら、0.01g単位でブレンドを整えていきます。

言ってしまえば、**私たちのスパイスは“風味の設計図”**です。
調味料のカテゴリーでありながら、使い方にレシピの制約はなく、むしろ“余白”を楽しむための存在。

この哲学は、「SPICE CURRY SYMPHONY」シリーズにも表れています。
一般的に「カレーらしくない」と言われることもあるブレンドですが、それこそが意図。
カレーという料理は、もっと自由であっていい。もっと、創造的であっていい。

たとえばNo.3には、あえてターメリックを入れていません。
No.4では、パプリカパウダーを入れていません。
なぜなら、「色でカレーらしさを演出する」ことを選ばず、「香りでその奥にある感情を呼び起こす」ことを大切にしているからです。

“カレー”の概念を、より広く、柔らかく捉えてもらうことで、作り手であるあなたが、まったく新しいカレーの輪郭を描けるように。
そんな願いをこめて、私たちはスパイスを設計しています。

続く>> 【後編】香りが心をほどく。ひがし茶屋街の裏路地にあるスパイスの秘密基地

【前編】スパイスの魔法に魅せられて。料理好きのひらめきが生んだ新しい調味料体験

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