一杯のチャイには、いくつもの土地の記憶が溶けている。馬告、トンカ豆、チムール──聞きなれない名前のスパイスたちが、どこから来て、どうやって金沢の小さなアトリエに辿り着いたのか。
チャイと聞いて思い浮かべるのは、甘くて、スパイシーで、ミルクのまろやかなあの一杯かもしれません。けれど、その「あたりまえ」の裏側には、何千キロもの旅と、何百年もの時間が積み重なっています。
Inspiceのチャイは、12種のスパイスと茶葉、そして赤糖でできています。そのひとつ、馬告(マーガオ)は台湾の山地に育つ実。レモングラスのような清涼感と、胡椒のような刺激を併せ持ちます。トンカ豆は南米生まれ、バニラにも似た甘い香り。チムールはネパールの山椒で、柑橘のような華やかさを連れてきます。
香りを辿ると、世界が見えてくる。
なぜ、12種なのか。
スパイスは、単体では主張しあいます。カルダモンの清涼、シナモンの甘い余韻、ジンジャーの芯の熱。どれも個性が強く、ひとつ間違えれば喧嘩をする。けれど、調香味士が0.01g単位で割合を設計すると、それらは互いを高めあう「和音」になります。
私たちはこれを、レシピではなく「香味の物語」と呼んでいます。料理をつくっているのではなく、一杯のなかに小さな物語を編んでいる──そんな感覚に近いのです。

「人生最高のチャイ」と呼ばれて。
ありがたいことに、お客様から「人生最高のチャイをみつけた」と言っていただくことがあります。その言葉に応えたくて、今日も金沢のアトリエでは、0.01g単位の調香が続いています。
次にチャイを口にするとき、ほんの少しだけ、その香りが辿ってきた旅を思い浮かべてみてください。きっと、いつもの一杯が少しだけ違って見えるはずです。
楽しい、嬉しい、美味しい毎日を/自然と、しぜんに。 Inspice









